DATE
2026/02/28
【調査レポート公開】日本企業の「標準化できている」7割──しかし4割が属人化に悩む矛盾の正体
株式会社Merは、従業員100名以上の企業で、業務プロセスや運営改善に携わる責任者・担当者 537名を対象に「日本企業の業務プロセスとAI Operationsに関する実態調査」を実施。約7割が「業務プロセスは標準化されている」と回答する一方、4割超が「属人化」を課題に挙げる矛盾が明らかになった。この背景には、日本企業特有の「アナログな標準化」への誤解がある。
なぜこれが重要なのか
AI活用が経営の競争優位を左右する時代において、日本企業の多くは「標準化できている」と認識しながら、実際にはAIを組み込める状態に至っていない。BCG社の調査では、AI投資の価値の70%は「アルゴリズムやデータ」ではなく「業務プロセスと運営モデルの変革」から生まれるとされる。しかし、日本企業の多くはこの前提条件を満たしていない可能性が高い。
「標準化」の定義がズレている
調査では、約7割(67.6%)が「業務プロセスが文書化・標準化され、組織的に運用されている」または「継続的な改善・最適化がされている」と回答した。しかし、同じ回答者の43.8%が「業務プロセスが可視化・整理されていない」、42.5%が「業務が属人化している」と答えている。
この矛盾の正体は、「アナログな標準化」と「デジタルな構造化」の混同にある。多くの日本企業が「標準化」と認識しているのは、PDFマニュアルやExcel管理、口頭での引き継ぎといった「人が読んで理解する」ための文書化だ。しかしAIが機能するには、ワークフローシステムやAPI連携など、ルールがシステムに実装され、AIが処理できる「構造化」が必要である。
本質業務に割ける時間は6割未満
調査では、約半数(47.8%)が本来注力すべき業務に充てられている時間は「全体の6割未満」と回答。本質業務以外に時間を取られている要因の1位は「会議・打ち合わせ」(64.5%)、2位は「社内調整・承認待ち」(51.9%)だった。
日本生産性本部の調査によれば、日本の労働生産性は主要先進7カ国で最下位が継続しており、非本質業務に費やす時間はベストプラクティスの2〜4倍とされる。今回の調査結果は、この構造的な問題を裏付けている。
海外先進企業との差が拡大
一方、海外先進企業では業務プロセスの再設計が進んでいる。Workato社の調査では、生成AIを組み込んだビジネスプロセス数は前年比400%増。75%以上の企業が4つ以上の部門をまたぐ自動化を実装している。
Global Biopharma社は、生成AIでバリューチェーン全体を再設計し、臨床試験レポートのドラフト作成を15〜18週から5週に短縮。新製品の市場投入が3〜6ヶ月短縮され、潜在的なコスト削減効果は約67億円以上に達した。
BCG社の調査では、AI活用で成果を出している「Future-Built企業」と、導入が遅れている「Laggards企業」の売上増加における差は、2024年から2028年にかけて5.0ポイントから8.6ポイントへと拡大する見込みだ。成果を出した企業ほど再投資を増やし、差が開き続ける構造になっている。
実践への示唆
日本企業がAI Operationsを実装するには、「マニュアルがある=標準化」という認識を改める必要がある。McKinsey Global Instituteは「個々の個別タスクの自動化だけでは不十分。人・AIエージェント・ロボットが協働する前提で、プロセス全体を組み直す必要がある」と指摘している。
AIを組み込むための3つの条件は、①構造化(業務を分解し、誰がやっても同じ成果が出る構造にする)、②標準化(組織全体で同じプロセスで動ける状態をつくる)、③改善サイクル(データに基づいて継続的に最適化する)である。
まとめ
日本企業の多くは「標準化できている」と認識しているが、その実態は「人が読むための文書化」に留まっており、AIが実行できる「構造化」には至っていない。この認識のギャップが、AI Operationsへの移行を妨げている。経営層は、自社の業務プロセスが本当に「AI前提の運営構造」になっているかを見直す時期に来ている。
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